『子どもに平和を教えよう−いきいき平和学習』
2002年発行 全55頁

 平和の大切さは認識していても、現在の急速に変化する国際状況と国内状況の中でどのように平和教育を行っていけば良いかはなかなか難しいことです。

 平和教育について今まで書いてきた文章を再構成し、また2001年度の平和教育授業研究会の紹介を含めて冊子にまとめました。
 平和教育の授業が広がる一助となればと思って発行しました。
 冊子中身を示すもくじは下にあります。
 冊子発行の目的を書いてある「はじめに」の部分を掲載しました。
 冊子のメインである「平和教育の方法」もリンクしています。 

もくじ

 はじめに
 1 平和教育を行う視点
 2 戦争体験の継承
 3 積極的平和をめざして
 4 平和博物館による平和学習
 5 「平和文化」の形成
 6 「総合的学習の時間」の活用
 7 平和教育の世界的動向
 8 平和教育の方法
   1.子どもの平和イメージ   2.子どもの能力感を広げる
   3.子ども参加の学習方法で 4.生活につながる平和問題を扱う
   5.戦争の学習を        6.平和を見る広い視点を
   7.平和な社会を作る行動をうながそう  8.教師自身の平和学習を
 9 平和授業研究会とは
 10授業実践例 


はじめに
 平和の大切さは認識していても、現在の急速に変化する国際状況と国内状況の中でどのように平和教育を行っていけば良いかはなかなか難しいことです。
 日本は1945年以降参戦していませんが、戦争がないだけが平和ではありません。ただし、日本は世界の他の国と比べたらとても平和です。私たちは毎日の食事により充分な栄養を得ているし、誰でも9年以上の学校教育を受けることができます。

世界がもし100人の村だったら(池田香代子『世界がもし100人の村だったら』マガジンハウス、2001年):
「もしあなたがいやがらせや逮捕や拷問や死を恐れずに信仰や信条、良心に従ってなにかをし、ものが言えるならそうではない48人より恵まれています。」
「もしあなたが空爆や襲撃や地雷による殺戮や武装集団のレイプや拉致におびえていなければ、そうでない20人より恵まれています。」
日本はいずれの場合でも恵まれたグループに入ります。

 現在、国境を越えてモノ、金、人、情報が急速に移動しており、国と国とのつながりは年ごとに密接になっており、地球社会といってもよい状況になっています。
ただし、世界には平和でない国が多くあります。内戦が続くアフリカ諸国や、テロの連鎖が止まらないパレスチナとイスラエルの関係があります。アフガニスタンをはじめ世界には多くの難民がいます。また、経済発展がうまく進まず開発途上国の人々の貧困状況はなかなか改善しません。
 「平和は大切である」と思っていても、日々の授業と雑務に追われて、平和教育の実践をすることが少なくなっています。今と未来の平和社会を形成するには、新しい社会を創る子ども達の意識と態度と行動力を育てることが必要です。
他方で、戦争を教えることは平和教育の大切な一部です。小・中・高等学校では、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワの学習を中心とした戦争体験継承の平和教育を行っています。けれども、第二次世界大戦が55年以上前の歴的事項となる中で、戦争をどのように子どもたちに教えればよいのでしょうか。
 平和教育の再生に向けて、21世紀の平和教育をこれからどう行っていくかの方向性をできるだけ明らかにしたいと思いました。この冊子では、平和教育の二つの方向性を示しています。

(1)「子どもに平和を教える」
平和教育で、戦争が無いことだけで良いとするのではなく、より積極的な平和を作ることを目指します。
平和な社会には、基本的人権、平等、安全、正義が実現される必要があります。
あるべき平和像を子どもたちがイメージを構想し、平和社会の形成に向けて希望を持って社会参加する意識や態度や行動を育てます。
題材としての平和だけでなく、平和的な教え方(教育方法)、平和的な雰囲気(教育場面)を大切にします。

(2)「いきいき平和学習」
受け身の平和教育ではなく、子どもたちの自発的・主体的な授業参加を促す教育方法を工夫します。
子どもたちの興味と関心がある平和問題を、平和学習の題材として取り上げます。
身近な暴力問題を取り上げ、子どもの生活の場で発生する暴力(いじめ・校内暴力)や、テレビで見る時事的な紛争との関係を考えます。
戦争を教える時は、子どもが受け身にならないように、教え方を工夫し、子ども自身で戦争体験を追体験し、学んだことを人々に伝えることを目指します。

→冊子の利用の仕方としては、「もくじ」を見て関心のあるところを読んでください。
平和教育の実践方法について、工夫する点を知りたい方は、「8 平和教育の方法」をご参考下さい。
平和教育の授業実践についてグループで研修したい方は、「9 平和教育授業研究会とは」をお読み下さい。
この冊子が、平和教育を実践しようとする人々にとって少しでも役立つことを願っています。




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