道の駅かでな
2007年12月27日訪問
沖縄本島の西海岸を通る58号線。
この国道を走る、那覇と名護を結ぶ路線バスに乗り、嘉手納で降りる。
嘉手納ロータリーの所である。
そこから基地のフェンス沿いを歩いて約25分、「道の駅かでな」に着く。
トイレや休憩所があり、売店、食堂、喫茶室があるところはふつうの道の駅と同様である。
特徴的なのは、ここには展望場と学習展示室があるところだ。
4階の展望場からは在日米軍嘉手納基地が一望に見渡せる。
広大な敷地を横切る長い滑走路の向こうには大きな格納庫やさまざまな建物、光る海をバックに巨大な垂直尾翼を並べている大型ジェット機。
その海の上空から機影が近づいてくる。大型輸送機のようだ。
着陸態勢に入り、滑走路に進入するが、また飛び立っていく。
タッチ・アンド・ゴーという訓練なのだろう。
上昇した機体は左旋回して雲の中に消えていった。
こういう光景が展望場からは、まざまざと見える。
デパートの屋上などにあるような望遠鏡も備え付けてある。100円で100秒。
3階の学習展示室は、受付で記帳して入るようになっている。無料。
展示は古代から戦前・戦中までの嘉手納のあゆみが語られる。
当然、沖縄戦の被害とそれからの復興は詳しく語られる。
また、嘉手納の特産品のコーナーもある。
しかし、展示スペースのおよそ半分は嘉手納基地に関するものである。
基地のパノラマ模型や配備されている航空機の模型もある。
基地に関する展示は一貫して基地被害の観点から語られている。
映像シアターではエイサーと基地問題のビデオの2つから選んで見ることができる。
どちらも上映時間は約5分。
基地のビデオは、嘉手納基地の歴史と現状、騒音の問題、基地内の墓所や拝所の問題などが要領よくまとめられている。
ナレーションは、嘉手納町民から外の人への語りかけになっていた。
騒音については、体感できるコーナーがある。
レシーバーが3つあって、それぞれトラックの音、ジャンボジェットの音、戦闘機の音が聞ける。
トラックもうるさいし、ジャンボは腹に響くような騒音だが、戦闘機はキーンと頭に突き抜けるような音だった。
厚木基地周辺の住民が「騒音ではなく爆音」と言っていたのを思い出した。
道の駅かでなの展望場と学習展示室は、基地問題を知ることで平和を考えることのできる、平和ミュージアムとしての機能を持つ施設であるといえる。
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しかし、「考えることができる」と「考える」の間には、いささかの距離があるように思える。
展望場で基地の方を眺めている人たちを観察していると、どうも基地を見ているのではなさそうである。
航空機を見ているのだ。
カメラの望遠レンズは機影を追っている。
1階の「特産品展示販売場」には、沖縄の特産品や土産物と並んで、米軍ジェット機のおもちゃや弾丸などの軍装品、基地をモチーフにしたTシャツなどを売っている。
一方で、地元出身の人気グループのメンバーがデザインした、平和をテーマのTシャツも売っているのである。
親子連れが買い物していた。
若い父は「わーすげー」を連発しながら ジェット機の写真パネルや弾丸キーホルダーに見入っていた。
子どもも同じように弾丸グッズを見ている。
その親子はタレントの平和Tシャツにも同じく「わーすげー」と見入るのである。
そこに提示されているものをどう受け止めるかは、見る側に委ねられている。
だとすれば、提示するだけでは平和教育にはならないかもしれない。
提示した上で、それを見る視点、考える姿勢、追求すべき立場などというものも示していく必要があるのではないだろうか。
帰り道、嘉手納ロータリーの再開発で建設された新しいビルに掲げられた「歓迎沖縄防衛局」の大きな幕を見ながら、そんなことを考えた。