ロールプレイ「パレスチナ問題の解決方法は?」
ロールプレイ(役割演技):「パレスチナ問題の解決方法は?」
(参考:「アフガンへの軍事攻撃」のロールプレイ:『子どもに平和を教えよう』)
時間配分:
1)知識の整理(10分)
配布資料「パレスチナ問題」(毎日新聞社外信部編著『世界の紛争がよくわかる本』東京書籍,1999年)
2)役割別準備(10分):各役割ごとに集まり自分たちの役作りを行い,何を主張するかを話し合う。
3)役割討議
@1回目の討論(20分):名前と出身のごく簡単な自己紹介から始める。
A2回目の討論(15分):妥協や問題解決を目指す姿勢で話し合う。
4)振り返り(10分):必ず自分の役やほかの役について感じたこと考えたことをふりかえる時間をとってください。ロールプレイの後,他の人へ感情のしこりが残らないようにします。
配役
@イスラエル市民 48歳
Aイスラエル軍の軍人 32歳
B日本の中学2年生 14歳
C日本の教師 47歳
Dパレスチナの解放組織のハマスの一員 24歳
Eパレスチナ住民 58歳
@イスラエル市民
「罪のない人を標的とするテロ事件は防止しなければならない」
名前(年齢)
アン・マタニヤフ(48歳)女性
プロフィール
ポーランドのクラクフ生まれ、現在はエルサレムに夫と子ども二人の家族4人で生活しています。私の仕事先は、エルサレム中心街にある貿易会社に勤めています。
2001年の12月の連続自爆テロ事件で、近所に住む知り合いの息子さんが、レストランでの自爆テロで犠牲になりました。大学時代のクラスメイトの一人もテルアビブでの自爆テロで犠牲となりました。
テロ事件が頻発しているので、人が多く集まるところは怖くて不安です。買い物も必要最小限にしか出かけませんし、レストランでの外食もほとんどしなくなりました。
◆意見
○2001年12月のテロ事件以降毎日のように、テロの犠牲者達の様子や、残された家族の悲しみや怒りの様子がテレビで何回も報道され、それを見ました。無実のイスラエル市民を巻き込んだ一連のテロ事件に対して強い怒りを感じます。
○過去においてイスラエル市民に対するテロ攻撃は連続して起こっています。今回の一連のテロ攻撃は、平和を望むイスラエル市民と和平プランを実行しようとするイスラエル政府に対する裏切り行為です。
○イスラエルとパレスチナの和平交渉が進むたびに、爆弾テロ事件を繰り返すパレスチナ人は道徳的に腐っています。アラファト議長はテロ中止を本気で取り組んでいませんし、所詮イスラエルとアラブは分かり合えないのかも知れません。
○アラブ人を信用することはできませんが、安全な市民生活を取り戻したいので、イスラエル政府はパレスチナとの政治的交渉により、再びテロ事件が起こらないような政治状況を作って欲しいです。
Aイスラエル軍の軍人
「イスラエルに対するテロ攻撃に反撃し、テロ組織を壊滅しなければならない」
名前(年齢)
オットー・シャミル(32歳)男性
プロフィール
イスラエル国家に貢献するために、陸軍士官学校に入校しました。父親も軍人であり、アラブ諸国との数度の中東戦争に勝利したイスラエル軍を誇りに思っています。
イスラエル軍の一員として、シャロン政府の命令に従い、テロ組織掃討作戦のためアラファト議長がいたラマラで軍事行動を行いました。
テロ実行犯の出身地であり、テロ組織の本拠地があるパレスチナ自治区に対する武力行使において、今後もイスラエル軍人として最善を尽します。
◆意見
○イスラエル市民を巻き添えにする無差別テロは決して許してはなりません。テロを計画し実行した者に対してその責任を負わせる必要があります。テロに対し、何もせずに見過ごすわけにはいきません。反撃しなければ、次のテロを招くことになります。
○2001年12月以降のイスラエル市民に対するテロ攻撃は、テロ組織を支援するパレスチナ政府によるイスラエルに対する宣戦布告です。テロ事件の犠牲となった多くのイスラエル市民とイスラエル軍人のために、テロ組織と戦います。
○パレスチナ自治政府のアラファト議長にテロ実行犯を引き渡すように要求しましたが、彼らはそれを拒否ました。だから、パレスチナ自治区でのテロ組織掃討目的の武力行使は当然の行動であり、パレスチナ自治区への攻撃の責任は、全てパレスチナ側にあります。
○軍事攻撃の標的は爆弾テロを支援するパレスチナのテロ組織です。テロを計画し、実行犯を訓練し武装を助け、資金を与えるテロ組織を壊滅する必要があります。
B日本の中学2年生
「戦争は無実の人々を苦しめる悪であるから、すぐに中止すべきである」
名前(年齢)
鈴木絵里香(14歳)女性
プロフィール
京都市内の中学校に通う中学2年生の女子生徒です。以前通った小学校では、6年生の時に平和学習に熱心に取り組み、ミニ戦争展を催したり、修学旅行では広島に行き、その事前・事後には被爆体験を学ぶ平和学習を行いました。
中学になって国際社会の動きに関心を持ち、テレビのニュースもよく見ます。
特に、自爆テロ事件とパレスチナ自治区への侵攻に対し、戦争が世界に広がるのではという不安があります。パレスチナ難民キャンプで傷ついている子どもの映像を見て、戦争は悪であり、無実の市民を巻き込むので絶対にしてはならないと思います。
◆意見
○イスラエル軍によるパレスチナ自治区への侵攻で、多くの無実の子どもや女性などのパレスチナ市民が傷ついています。パレスチナ難民キャンプで暮らしている一般の人々にはイスラエルで発生したテロ事件の責任はありません。
○イスラエル軍の報復攻撃により、パレスチナ難民がさらに増加し、特に子どもや女性や老人が栄養不足で医療を受けられなくて苦しんでいます。戦争はいつでも弱い無実の人々を苦しめる悪だから、すぐに中止するべきです。
C日本の教師
「テロへの報復はその報復を呼ぶだけであり、イスラエル軍による報復攻撃には反対である」
名前(年齢)
太田典子(47歳)女性
プロフィール
1955年に沖縄の首里市で生まれました。沖縄の教員養成学部を卒業し、20年以上小学校の教師を勤めています。現在は那覇市内で小学校6年生のクラスを担当しています。
私の母親は第二次大戦の沖縄戦の時に、彼女の母と妹(つまり私の祖母と叔母)を亡くしており、彼女の父親(私の祖父)により育てられました。そのため、私は子どもの頃に母親から、沖縄戦の時の米軍による艦砲射撃や沖縄本島南部で逃げ回った悲惨な被害体験を幾度も聞きました。2001年12月にイスラエルで連続自爆テロがあって以降、クラスの子ども達からしばしば、「自爆テロをして怖くないのか」とか、「イスラエルはなぜパレスチナを攻めるのか」などの質問を受けました。
◆意見
○市民を巻き添えにしたテロは決して許してはいけません。パレスチナ問題解決のためは平和共存政策を進めていかなければなりません。
○テロは心への暴力であり、テロへの報復はその報復を呼ぶだけであり、暴力の悪循環になります。
○日本は憲法で「平和を求める国際社会において名誉ある地位を占めたいと思う」の考えを記してあり、報復攻撃を繰り返すイスラエルとパレスチナの関係を改善するために、日本は政府と民間レベルでもっと努力すべきです。
○従来パレスチナ自治区で協力してきた、開発援助を今後も継続する必要があります。
Dパレスチナの解放組織のハマスの一員
「侵略行為を止めないイスラエルに対して徹底的に戦う」
名前(年齢)
フッサム・ハダー(24歳)男性
プロフィール
私はヨルダン川西岸のジェニン難民キャンプで産まれました。私の父親は、私が8歳の時イスラエル軍によりテロ容疑者として逮捕され、そのまま行方不明です。1987年のガザ地区でのインティファーダ(民衆決起)の時は、9歳でした。家族は、母親ときょうだい3人で、とても貧しかったけれど、イスラム教を信じる人々に助けられて私たちは成長しました。
私は難民キャンプの中で生活する中で、パレスチナの独立とイスラエルの抹殺を目的とする「ハマス」(イスラム過激派)の一員となりました。
イスラエルに対して今回一人で闘いを挑み、自爆攻撃を成功させて殉教したオダリン・アブアイシャ(21歳)は敬虔なイスラム教徒であり、われわれの英雄です。
◆意見
○悪いのはすべてイスラエルである。パレスチナ人の土地を占領し続け、パレスチナ人の土地に入植を続けるイスラエルのシャロン政権は全く信用できません。
○パレスチナ自治政府のアラファト議長は、私たちの指導者です。しかし、イスラエルに対する爆弾攻撃の実行者を、彼らに引き渡すことは反対です。
○自分も含めて、抑圧されている多くのパレスチナ人は、イスラエルとの戦いにおいて死ぬ覚悟ができています。我々パレスチナの若者は、殉教者となることを望んでいます。
○我々はイスラエルやアメリカの脅しなどには負けません。かつて中東地域からヨーロッパの十字軍を敗退させたように、イスラエルもいつかアラブの国々が追い出すことができると思います。
Eパレスチナ住民
「イスラエル軍や市民に対するテロは、イスラエル政府への不信の現れである」
名前(年齢)
ハムザ・ムハマド(58歳)男性
プロフィール
イスラエル建国直後の第一次中東戦争(1948年)に、5歳の時に住み慣れた場所を追われてヨルダン西岸に移住してきました。現在はパレスチナ自治区で食料品店を営んでいます。
きょうだいの家族の中には、第2次・第3次中東戦争後に周辺のアラブ諸国で働きに出て生活しているものがいます。また、ヨルダン領内の難民キャンプで暮らしている親戚もあり、そこは居住環境が悪く衛生状態も悪いです。
今回のイスラエル軍によるパレスチナ自治区への攻撃で、私の家は破壊されてしまいました。家族は無事でしたが、壊された家と店を建て直さなくてはなりません。
◆意見
○私は、何10年にも渡って、パレスチナ人の国の建国を望んできました。イスラエルとパレスチナの間の和平交渉がまとまっても、イスラエルの強行派が和平に反対し、またイスラエル軍がパレスチナ自治区の住民を攻撃するので、イスラム過激派との報復攻撃が繰り返されて、和平が実現しません。
○イスラエルは、数十年にも渡ってパレスチナ人の土地を占領しており、パレスチナ人の土地への入植地を現在もさらに増やしています。治安と称してイスラエル軍人によるパレスチナ住民への暴行をやめようとしません。
○パレスチナ人による自爆攻撃をやめさせるには、現在のイスラエルのパレスチナ占領政策を変える必要があります。つまり、イスラエルは、パレスチナ自治を認める1993年のオスロ和平案を早急に実施し、ヨルダン川西岸より完全に撤退すべきです。