第1回の平和教育授業研究会(ペグ)の様子
テーマ:身近な暴力への対応、難民問題の学習方法
実施日時:2001年6月9日(土)午後2時から5時
実施場所:大学院棟4階 G2教室
第1回ペグの内容
@参加者の近況紹介 握手ゲーム、 近況:「しあわせまわし」(『静かな力』11頁) 「自分の良いところの頭文字」(『静かな力』13頁) 今日の期待 A平和教育のワークショップ ○参加型のゲームをしよう。 「割りばしを使って」(『「体ほぐしの運動」活動アイデア集』107頁) ○平和のカリキュラム案をちょっと考えよう。 【資料:子どもの発達段階と平和教育の学習目標(カリキュラム編成基準案)】 ○学校で子どもの「暴力」に対応する ブレインストーミング:「相手をけなす言葉」「個性を認める言葉」(『静かな力』11頁) ロールプレイをしてみよう:校内暴力をした生徒に対するロールプレイ B平和教育の模擬授業 授業案「地球社会を生きる」を実践しよう (参考教材:「難民−同時代を生きるこどもたち」『生き生き開発教育』44頁) C今後行う模擬授業の計画 【資料:模擬授業の授業案】 今後の予定 Dエンディング 第1回ペグの参加者の感想 参考資料 開発教育協議会 2000『生き生き開発教育』。 ステファニー・ジャドソン 1995(三国千秋訳)『静かな力−こどもたちに非暴力を教えるための実践マニュアル』嵯峨野書院。 村田芳子ほか編 2001『「体ほぐしの運動」活動アイデア集』教育出版。 |
「個性を認める言葉」「相手をけなす言葉」
当日のブレインストーミングの中身を紹介します。これは、ブレインストーミング:「相手をけなす言葉」「個性を認める言葉」(『静かな力』11頁)を用いました。
参加者から出された言葉は、子どもに対する言葉かけ(または接する姿勢)を考える上で大変参考になります。下の表では、それぞれの言葉が、言葉を発する人のどのような姿勢かにより分類しました。
子ども自身が自己を認め自分を愛することは、平和を愛する基盤となります。子どもの個性を認める言葉を種類豊かにたくさん持っていることは、子どもを支援する教育実践技術の一つです。
「個性を認める言葉」により子どもの自尊感情を形成することは、平和志向の態度を形成することにつながるといえます。
○個性を認める言葉 できばえの評価:かしこい。そこがいい。上手に書けたなー。すばらしいな。鋭いな。すごい。天才やな。いい感じやな。プロやね。わあすごいすごい。 存在を評価:今日は輝いている。何でこんなにいい子なんやろ。いい子や。かわいい。優しいな。君はおもしろい。 がんばりの慰労:良くやったなー。もうやめてえーで。よう頑張ったね。伸びたねー。ようそんな事気づいたな。 愛情表現:抱きしめてあげる。 納得:なるほどね。私もそう思う。 可能性の評価:お前やったらできる。 相手に対する関心の表現:元気そうやな。 相手へのお願い:見せて、見せて。教えて教えて。 感謝:ありがとう。勉強になったわ。 |
○相手をけなす言葉: できばえの悪い評価:下手くそ。遅いなー。変やで。おかしいで。 態度の悪い評価:やかましい。やる気あんのー。なめてんのとちゃう。 可能性の否定・指導のあきらめ:どうしょうもない。もう無理やめとき。もういいって。わかりました。あーあー。 相手への注意:何聞いてんの。前言ったやんか。何回言わせるの。三度目やで。今日何回目。いいかげんにし。もうそろそろやぞー。そんなん聞いたこと無い。 侮辱:あほちゃう。馬鹿。最低や。おかしんちゃう。頭の中どうなってんのか。頭付いてんのか。はあー。 存在の否定:きもい。うざい。うっさいなー。うっとしー。きしょい。 愛情の拒否・相手を切り捨て:付き合いきれへん。勝手にしたらいい。勘弁して。知らんあんたみたいな人。いらんしー。もう帰れ。お前おらんほうがえー。だからダメよ。 (調子に乗るな) |
○時間配分 ロールプレイ 10分を2回 意見交換と評価 15分 場面設定:中学校で暴力事件(生徒間暴力)を起こした。相手の生徒は打撲傷と骨にひびが入り、足にギブスをはめた。 役割設定: 中学で生徒当事者の生徒A: 間暴力事件を起こした2年生男子生徒。学力は普通で中ぐらいだが、人にけなされるとカットなって気持ちをコントロールできなくなる。小学生の時父親に暴力を振るわれて育っている。大学まで行きたいと思っている。 暴行した生徒の友人B: 数少ない彼の友達の一人で中学2年生。彼のキレル性格を知っている。今回の暴力事件が起きた経過と様子を知っている。 生徒指導担当教師: 権威主義的な性格である。今回中学で暴力事件を起こしたのは2度目である。暴行され被害を受けた生徒の親から、暴力を振るった生徒とクラスを代えるように強い要求がでている。校長から、教育委員会に報告する様に指示されている。 担任教師: 生徒の意見をできるだけ聞き、教育的に解決を図ろうとする。生徒に深く反省を促すことで再発を防止しようとする。 暴行した生徒の親: 父親がしつけと称して急に暴力を振るうので、子どもが暴力的になるのも仕方がないと思っている。 反省点:暴行した生徒の友人Bが面接場面にいると生徒Aが暴力を起こしたことを反省する雰囲気になりにくい。生徒Bを入れる代わりに、生徒Aのもう一人の親を入れた方がよいと、後の振り返りで意見が出た。 |
○対象学年 小学校高学年 ○ねらい 難民の存在は子どもや教師自身にとって遠い存在である。地球上では現在もなお戦争がくり返され、多くの難民が生み出されている。このような現状に、治安が良く飽食の時代といわれる平和な日本社会に住んでいる日本人が、主体的にどのように感じまた具体的に関われるのであろうか。 授業では、フォトランゲージを用いて、イメージの変化を知り、難民の少女の気持ちを測る。次に、「鞄と持ち出しカード」のシミュレーションゲームを通じて、難民の苦労を体験する。 ○学習の展開 @フォトランゲージ「イメージの想像」:難民の子どもの心を想像させる。 1971年東パキスタン(現バングラディッシュ)からインドに逃れてきた難民 (参考資料『テーマワーク』73頁) A「逃げなくてはなりません、そのとき何を?」 ねらい:逃げていく場面を体験し、難民のこどもたちの体験を知る。 第1場面 逃げなくてはならず、鞄2つに荷物をつめる。 第2場面 港で船に乗るため、グループで話し合いにもつを半分に減らす。 第3場面 ある国についてパスポートを確認される。 第4場面 逃げる途中で、家族の一人が病気になり、食料や医薬品がいる。 到着場所の違い。 第5場面 到着地 難民キャンプ: 食料、水、毛布を配給される。 第2次戦後の舞鶴港: おにぎり、みそ汁、宿所提供、就職対策。 アウシュビッツの強制収容所: 労働可と否に分けられる。荷物は没収。 アメリカ合衆国: 難民適応センターへ。 第二次大戦中の米国での日系人収容キャンプ。 ○評価の視点 知識:難民について理解したか。 態度:暴力(戦争)の被害者である難民へ共感がもてる。 技能:平和の問題を客観的に考えることができる。 【参考資料】 「難民−同時代を生きるこどもたち」、開発教育協議会 2000『生き生き開発教育』44頁 開発教育センター 1994(ERIC他訳)『テーマワーク』ERIC国際理解教育・資料情報センター発行) 参考授業案:「地球社会に生きる」(平和教育特論提出) |
参加型の授業の事例を、体験を通して知りたいというのが参加を決めた第一の理由です。また、職場に紹介して、中学校現場の授業をどう変えれば(生徒が自己発信できる機会を増やす)よいかを探ることが自分の役割と自覚しています。その意味で今日、新しい事例を知れたことはとても良かったです。中でも、ロールプレイで状況設定をかなり細かくするということは参考になりました。それと「地球社会を生きる」のゲームで、具体的に避難するとき、自分にとって何が必要かを考える機会があったのが、自分をふりかえることにもつながりました。肩ひじをはらずに参加できたので次回も楽しみにしています。 |
ワークショップ形式の授業は、講義形式のものと比べてリラックスできるし、色々想像をめぐらせる機会も多いので、非常に楽しい。特に、今回初めて体験したブレインストーミングとロールプレイは、通常の講義ではなかなか気づかないような現実味を持った事実に気づかされた。体験授業を受けるときは、気持ちをリラックスさせたり、頭の思考を柔軟にする「準備体操」のようなもの(今回の「握手ゲーム」などのこと)が必要だと思う |
「実践に役立つものをもらって帰る!!」こういう気持ちで参加しました。 気が付いたら−。自分自身がすごく楽しめて、ノートに書きとめておくのを忘れてしまったくらいです。 参加型の授業、懇談会に使えると思いました。またそういう内容を教えていただきたいです。 |
「難民・・・」を授業の流れの中でどこで活用するかが少し難しいように思いました。ある程度学習を積み上げた上で実践しないと「助かって良かった」的な終末で終わってしまったり、ゲーム感覚から抜けきれなかったりすると思いました。 |