第13回の平和教育授業研究会(ペグ)の様子


テーマ
中国について、これからの教え方:
平和をつくる視点から


実施日時2011年3月26日 午後1時30分〜5時30分
実施場所:F棟2階 F21教室
第12回ペグの内容 

1)日中関係の概説
   尖閣諸島沖衝突事件についての教育大学学生の意見から抽出(2011.1)(村上)
(2)「中国との対立」についてのワークショップ
(3)日中関係に関する意識から
   上海の中学生の平和意識調査(2009.3)からの報告(村上)
(4)平和をつくる学習についての意見交流
(5)振り返り

事後配付資料

(1)ロールプレイ

ロールプレイ:中国との対立(漁船衝突事件を振り返る)
 
○(中国側から見た)事件の経緯
 全国人民代表大会(国会に相当)が毎年開催される人民大会堂。中国政府の次なる手段は? だが、上記は日本側の立場で説明したものだ。中国側は尖閣諸島を釣魚島と呼び、自国の領土と主張している。当然のことながら自国の領海で操業していた中国漁船が日本の巡視船に不当に拿捕されて、船長が日本の国内法で裁かれてしまうと考えている。だからこそ、これは看過できないと反日機運が高まってい
 
○(日本側から見た)事件の経緯
 外務省のホームページ
  「尖閣諸島の領有権についての基本見解」
    http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html
  日本共産党のホームページ
  「尖閣諸島問題 日本の領有は歴史的にも国際法上も正当」
   【資料】
尖閣列島問題に関する日本共産党の見解(1972年3月31日)(PDF)
地図出版社(北京市)発行「世界地図集」1958年版日本図(画像)
中華民国の長崎駐在領事からの感謝状(画像)
1953年1月8日付の「人民日報」(画像)
「人民日報」該当部分の拡大(画像)
    http://www.jcp.or.jp/seisaku/2010/20101004_senkaku_rekisii_kokusaihou.html
 
表1 ロールプレイの展開予想
1回目

 
強硬派の意見が強くなる。
参加者が自己の立場を主張し、意見が鋭く対立する。
日本と中国との対立がエスカレートする。
2回目


 
歩み寄り、対話を始めようとしている。
国際理解教育の視点から、お互いの良い面を評価する。
地震災害における援助協力を視野に入れる。
意見の出し方や内容が異なれば、穏健な議論が可能なことを体感する。
 
ロールの立場
各役割
 ▼は1回目のみのせりふ。△は2回目のみのせりふ
 
@日本の小学生:意見「戦争を起こしてはいけない」
日本国憲法は戦争をしてはいけないと決めているので、中国とも戦争をしてはいけない。
▼日本の巡視船にぶつかった中国漁船の船長が、中国に帰国してテレビに映ったときにVサインをしたのはむかつく。
△東北関東大震災は、中国から援助隊がきたし、原発に62メートルの上から水をかける特別の車を送ってくれた。
中国が日本に嫌がらせをしたが、中国がこれからどう出てくるかこわい。
戦争では多くの被害を与え人の命を奪うので、どのような戦争もしてはいけない。
日本の文化の多くは中国から来たものであり、漢字は毎日使っているし、中華料理はおいしい。
 
A日本の中学生:意見「日本は尖閣諸島を守るべきである」
尖閣諸島に対する日本の領有権は、歴史的にも国際法上も根拠があり、日本の主張が正しいと、学校で習った。
▼中国漁船衝突事件の時、報復として、交流の中止やレアアースの禁輸など、日本の会社員4人の逮捕、など中国の態度は力ずくであり、恐ろしい。
▼ノーベル平和賞を受賞した劉暁波(りゆうぎようは)さんが釈放されていないのはおかしい。
△中国の多くの人が今度の地震に対して同情し、義捐金(ぎえんきん)を集めていると報道していた。
衝突事件のビデオ・テープでは、中国漁船が巡視船にぶつかってきたのは明らかである。
日本の領土と領海を自衛隊によって武力的にしっかり守る準備をすべきである。
 
B日本の教師:意見「時事問題を教えるときはお互い相手の実際をよく知る必要がある」
時事問題を学校で扱うときは、相手の実際をよく知り、相互に自分を反省することを通して日中関係が発展していく。
▼中国が「経済発展をすれば、開かれた(民主化した)社会になるはず」と言われてきたが、漁船衝突事件でその間違いに気づいた。
△日本は漁船衝突事件で中国批判にやっきになるだけでなく、平和な関係を作るために責任ある行動を取らなくてはならない。
私の学校にいる中国籍の子どもは、日本人の対中感情が悪くなっているので、周りの人の視線を気にしている。
中国の政治が個人の権利を大切にし、政権の選び方が民主化しないと、日本に対する外交姿勢が高圧的になる。
 
C教育大学の学生:意見「領土問題を学校で教えていく必要がある」
領土問題について国際社会と異なる認識を中国人が持つのは、中国政府が教育していることが原因だと思う。
▼ぶつかってきて、いろいろ文句を並び立て、自分たちの悪いところを全く認めない中国は、身勝手な国である。
△外交的に話し合って解決すべき領土問題を、子どもたちにどう教えていくかが重要である。
友達の中国人留学生が、漁船衝突事件について心配していたので、政府には領土問題を早く解決してほしい。
中国には反日感情を持っている人が多くいるので、そのことが漁船衝突事件が国際問題まで大きくなった原因だと思う。
 
D中国の生徒:意見「日本は中国に魚釣島を返すべきである」
中国領であるべき魚釣島で漁業をしていた中国漁船を日本が捕まえ、船長を逮捕したのはおかしい。
▼日本は中国の漁船を捕まえたが、日本は中国と「戦争する覚悟」があるのだろうか。
△日本で地震にあった中国人に親切にする日本人が多かったと聞いたので、日本人の温かさがわかった。
魚釣島で逮捕され釈放された中国人船長は、中国外交の勝利であり、英雄として誇りに思う。
魚釣島は、中国が外国に侵略された弱い時代に日本が奪ったものであり、歴史的に見れば魚釣島は中国のもの、と教えられている。
 
E中国の教師:意見「子どもたちに愛国心を教えていきたい」
釣魚島(日本名は尖閣諸島)は中国の領土である。自国の領海で操業していた中国漁船が日本の巡視船に不当に拿捕(だほ)されて、船長が日本の国内法で裁かれるのは、見過ごすことはできない。
▼抗日戦争記念館では、国が弱いと外国に侵略されたこと、中国が軍事的に強くならないといけないことを教える。
△上海万博の日本館では、ロボットなど最新の技術を日本が持っていることがわかった。今度の地震で、日本人が震災の時にも秩序を失わず、人々のレベルが高いことがわかった。
日本が中国の漁船員を逮捕したから、反日デモが起きたり、反日感情が強くなったのである。
子どもたちには、発展する中国に誇りを持ち、国造りに貢献する人に育ってもらいたい。
▼劉暁波(りゅうぎょうは)は、国家政権転覆煽動罪で裁かれた犯罪者であり、人々を扇動した悪い人である。
 
F評論家K :「中国の実態をよく理解することが大切」
中国において天安門事件(民主化運動)に公的な場で触れることはゆるされていない。
中国共産党は選挙で選ばれて政権についていないので、常に政治的な成果を国民に示す必要がある(政権にある正当性)。
政治的達成(例えば中国漁船の船長のVサイン)という結果をマスメディアで宣伝することで人びとの政府に対する不満を抑えている。
中国のインターネット人口は4.2億人に達し、普及率も31.8%に上昇。大衆の間でうなぎ上りに台頭するインターネット上の世論は、365日、党の政策決定プロセスに影響を与えている(「ときに拉致された気分」)。
中国の政治では、国を開放し、外資を呼び込み、市場を盛り上げ、公共投資でインフラや教育を充実させている。それに対し、日本の過去20年の経済は低迷した。
 
 
(2)ランキング 何を教えたらよいか
中国との対立の解消をめざして、教育課題の優先順位(ランキング)を行う。
 
a.国際教育    人・モノ・金・情報などのグローバル化により日中関係の緊密化が進んでいることを教える。例えば、日本企業の中国進出、日中の観光客の増加、在日中国人の増加、日中間の国際結婚の増加などを教える。
b.人権教育    中国の人権状況を教える。中国において現在も多数の農村戸籍と、少数の都市戸籍との間での移行は難しい。これら2つの戸籍の間では今でも教育・就職・医療・社会保障などの条件が異なり、都市戸籍の人が優遇されている。
c.震災教育    災害時の協力を教える。四川大地震で日本の国際緊急援助隊チームが中国で絶賛されたこと、東北関東大震で多くの中国人による義援金および、中国からの放水車の提供や燃料の援助などを教える。
d.多文化教育   共生をめざし、中国語会話や教え、調理実習で中国の食文化をを教える。在日中国人が直面する生活上の問題を改善するために、多文化を保障する教育制度や多文化理解ワークショップを行う。
e.日中関係  日本と中国の最近の関係について教える。関係悪化の要因として、靖国神社問題、東シナ海ガス田開発、ギョウザ事件、尖閣諸島問題、日本の歴史教科書問題などを教える。
f.持続可能な開発のための教育(ESD) 中国の環境改善が必要なことを教える。中国の多くの人びとの生活の向上のためには経済発展が必要であるが、急速な経済発展により大気汚染や水質汚染が深刻になっていることを教える。
g.平和教育    戦前の中国満州における日本による植民地支配や、日中戦争における日本軍による戦争加害について教える。世界で起こっている戦争や内戦の状況や、国連などの平和を守る国際的な取り組みについて教える。
h.歴史教育   明治以降の日本と中国の関係を教える。日本が中国との戦争に突き進んだ仕組みや、日本の戦争責任について教える。同時に中華人民共和国建国以後、「大躍進」「文化大革命」という中国共産党が犯した「重大な誤り」を教える。
i.政治教育    中国の民主化の方法を考える。中国で一党独裁の廃止や民主選挙の実施が必要であることを教える。天安門事件などで民主化運動が弾圧されたこと、投獄されている中国の政治犯(劉暁波など)を支援するアムネスティなどの活動を教える。
 
 
○加藤嘉一のHP記事より
 中国において天安門事件(民主化運動)に公的な場で触れることはゆるされていない。中国共産党は選挙で選ばれて政権についていないので、常に政治的な成果を国民に示す必要がある(政権にある正当性)。政治的達成(例えば中国漁船の船長のVサイン)という結果をマスメディアで宣伝することで人びとの政府に対する不満を抑えている。
 中央政府はネット世論を「社会の安定を揺るがす不安要素」と認識し、神経を尖らせている。
中国のインターネット人口は4.2億人に達し、普及率も31.8%に上昇。大衆の間でうなぎ上りに台頭するインターネット上の世論は、365日、党の政策決定プロセスに影響を与えている(「ときに拉致された気分」)。
 
 中国の政治では、国を開放し、外資を呼び込み、市場を盛り上げ、公共投資でインフラや教育を充実させている。それに対し、日本の過去20年の経済は低迷した。ある日本の政治家:「中国と上手につきあっていくためには、中国に民主化により体制を変えてもらわないといけない。日中関係におけるあらゆる外交事件を見ても、問題は中国にあるのだから。」
 
 
 
○新聞記事より「中韓、対日関係改善を狙う」(『読売新聞』2011.3.23 朝刊)
・・・中国が、対日改善を急ぐ狙いの一つは、中国・北アフリカに呼応した民主化要求集会の呼びかけが続く中、街頭デモを誘発しやすい反日感情を沈静化させておくことだ。抗日愛国運動の原点「五四運動」(1919年)記念日の5月4日を前に、「反日デモと民主化デモの融合は絶対さけたい」(共産党筋)状況にある。・・・中国は、誰もが受け入れられる災害救援について、尖閣諸島や東シナ海ガス田問題などで譲歩しなくても、日本を軟化させうる外交カードと見ている。
 
○連絡事項
@平和教育国際研究集会(IIPE)連携
関西フォーラム/シンポジュム発表者・参加者募集
http://gcpej.jimdo.com/
時 期:2011年5月14日(土)午後/15日(日)午前
 
A免許更新講習「これからの平和教育」
時期:2011年8月10日(水) 6時間
講習の概要: 内容平和教育についてわかりやすく解説し、講義だけでなくワークショップ形式を用いて平和教育の参加型手法を体験的に学びます。講義では、日本の平和教育の歴史を述べ、世界の平和教育を比較し、平和な社会をつくるための教育について説明します。ワークショップでは、戦争を伝える平和教育、平和をつくる平和教育、子どもたちの主体性を活かす平和教育、を実践する教育方法について学びます。


第13回ペグ参加者の感想
 日本の反戦意識は憲法の存在が大きいと思っている。しかし、憲法が言って
いることが現代社会の「平和」の定義に合致するわけではない。私は主に南側
の平和を考えているが、世界視野で、平和な社会に向けた教育のアプローチを
考えてみたい。
 平和という抽象的な概念は日常レベルから国際レベルまでの様々な観点から見
ていくことで、現時点での妥当な定義はできるのではないかと考える。しか
し、それを実現しようと思うならば、表面的な問題のみに目を向けるのではな
く、複雑に絡み合う要因を解決していかなければならないと考えていた。
 今回の授業やこれまでの平和教育などを通して身近な問題から深く考察して
いく事で平和という事について考えていけるのではないかと考えられるように
なった。
 今回も平和教育授業研究会に参加して感じたのは、平和教育のやり方がどのく
らい必要なのか、そして平和教育のカテゴリをどのように具体的にして定めた
らいいのか、について考える事ができました。
 このような研究会をより多くの人たちが参加できるようにして、平和教育の
研究と実践方法の重要性を広げていきたいですね。
 手が不自由なので随分悩みましたが・・・ 本日は参加させていただいてよかっ
たと思っています。「中国」が学べました。今後ともご案内していただきます
ようよろしくお願いいたします。
 正直なところ、「平和教育」というものに、あまり馴染みがない状態で、教師
としての約20年を、今までの自分は過ごしてきたと感じている。でも、恐ら
く自分の中での「平和教育」がやはり「反戦教育」にすりかわっているような
気もする。また、今迄自分が受けてきた教育が「反戦教育」に近いものだった
ような気もする(世代的に)。でも「平和教育」の持つ意味あいはとても広く
て、またそれを展開する手法色々あると、今日一日でもしみじみ感じた。
 後期の授業をスタート地点として学び直し(今頃ではおそかったのではあるが
・・・現実なので)、その流れで初めて今回のペグに参加させていただいた。院
での顔ぶれとまた違って、新しい刺激があり有意義なひとときでした。
 授業内容や方法、現状についての意見は書ききれないので、今回は省略しま
すが、一つ思うことはやはり教える(扱う)人間は、少なくとも知らなけれ
ば、見なければいけないと実感しています。(余力があるならば行って実際に
感じないといけないと思っています。)今後も継続して学び続けたいと思って
います。
 日中の課題に目を向けるよい機会になりました。ロールプレイのカードやラ
ンキングのシートをつくるには、試行錯誤されたように思います。資料を提示
してディスカッションをということはよくしますが、歴史問題について、この
ような手法は新鮮でした。かつて、D.セルビーさんから学んだ手法を見直し
て、応用してみたいともいます。

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